東京地方裁判所 平成7年(ワ)15888号 判決 1997年2月26日
原告
株式会社サン・グリーンカントリー倶楽部
右代表者代表取締役
早坂政吉
原告
エム・ジー・エム観光株式会社
右代表者代表取締役
早坂政吉
原告
エム・ジー・エムエンタープライズ株式会社
右代表者代表取締役
早坂太吉
原告ら訴訟代理人弁護士
高山征治郎
同
亀井美智子
同
中島章智
同
枝野幸男
同
高島秀行
同
森雅子
被告
株式会社ジェイ・セレモ
右代表者代表取締役
佐川昭一
右訴訟代理人弁護士
近藤康二
主文
一 被告は、原告株式会社サン・グリーンカントリー倶楽部に対し、別紙物件目録一記載の各土地について宇都宮地方法務局平成六年六月三日受付第六二二号所有権移転登記の各抹消登記手続をせよ。
二 被告は、原告エム・ジー・エム観光株式会社に対し、別紙物件目録二1記載の建物について、宇都宮地方法務局平成六年五月二七日受付第三六三五号所有権移転仮登記及び同目録2ないし129記載の各土地について、同法務局同年六月三日受付第六二一号所有権移転登記の各抹消登記手続をせよ。
三 被告は、エム・ジー・エムエンタープライズ株式会社に対し、別紙物件目録三1記載の建物について、宇都宮地方法務局平成六年五月二七日受付第三六三四号所有権移転仮登記及び同目録2、3記載の各土地について、同法務局同年六月三日受付第六二三号所有権移転登記の各抹消登記手続をせよ。
四 被告は、原告株式会社サン・グリーンカントリー倶楽部に対し、別紙物件目録一記載の各土地を明け渡せ。
五 被告は、原告エム・ジー・エム観光株式会社に対し、別紙物件目録二記載の各土地・建物を明け渡せ。
六 被告は、原告エム・ジー・エムエンタープライズ株式会社に対し、別紙物件目録三記載の各土地・建物を明け渡せ。
七 訴訟費用は被告の負担とする。
八 この判決は、第四ないし六項につき仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
主文同旨
第二 事案の概要
本件は、原告らが土地及び建物所有権に基づき、被告名義に経由されている所有権移転登記ないし仮登記の抹消を求め、かつ、土地及び建物の明渡しを求めている事案である。
一 争いのない事実
1 原告らの各所有関係
(一) 原告株式会社サン・グリーンカントリー倶楽部(以下「原告サン・グリーン」という)は、平成六年六月三日以前、別紙物件目録一記載の各土地(以下「目録一の土地」という)を所有していた。
(二) 原告エム・ジー・エム観光株式会社(以下「原告エム・ジー・エム観光」という)は、平成六年六月三日以前、別紙物件目録二1記載の建物(以下「目録二の建物」という)及び同目録二2ないし129記載の各土地(以下「目録二の土地」といい、同目録二2の土地を「目録二2の土地」のようにいう)を所有している。
(三) 原告エム・ジー・エムエンタープライズ株式会社(以下「原告エム・ジー・エムエンター」という)は、平成六年六月三日以前、別紙物件目録三1記載の建物(以下「目録三の建物」という)及び同目録三2、3記載の各土地(以下「目録三の土地」という)を所有していた。
(目録一ないし三の各土地建物をまとめて表示するときは、以下「本件土地建物」という)
2 被告の各登記及び占有
(一) 目録一の土地について、被告のために、売買を原因として、宇都宮地方法務局平成六年六月三日受付第六二二号所有権移転登記が経由されている。
(二) 目録二の建物について、被告のために、売買を原因として、宇都宮地方法務局平成六年五月二七日受付第三六三五号所有権移転仮登記が、目録二の土地について、同法務局同年六月三日受付第六二一号所有権移転登記が経由されている。
(三) 目録三の建物について、被告のために、売買を原因として、宇都宮地方法務局平成六年五月二七日受付第三六三四号所有権移転仮登記が、目録三の土地について、同法務局同年六月三日受付第六二三号所有権移転登記が経由されている。
(右の(一)ないし(三)の各所有権移転登記及び仮登記をまとめて表示するときは、以下「本件移転登記及び仮登記」という)
(四) 被告は、目録一ないし三の土地建物を占有している。
3 本件契約書(乙一)及び念書(乙二)、確認書(乙三)の存在
(一) 本件契約書(乙一)
被告を貸主、原告サン・グリーンを借主として、借入金額五億円、借入日を平成六年四月一八日、返済期間を同年七月一七日、元利金は借入期間最終日までに一括返済する内容で、被告の記名押印及び原告サン・グリーンの住所、社名、代表取締役名(代表取締役川端安次)の刻印された当時の社判と当時の代表者印による印影が存在する金銭消費貸借契約書(以下「本件契約書」という)が存在する。
本件契約書の第五条には、「原告サン・グリーンが、借入期間最終日までに返済を履行しない場合は、借入債務金額にて、原告サン・グリーンが運営するゴルフ場敷地内に存する所有名義者を原告サン・グリーン、原告エム・ジー・エムエンター、原告エム・ジー・エム観光とする不動産所有権全てを被告原告サン・グリーン間で売買し、借入債務の清算とします」と記載されている(以下「本件特約」という)。
(二) 本件念書(乙二)
原告サン・グリーンの被告に対する、「本件契約書により借入した債務についての弁済内容については、私共グループ会社、原告エム・ジー・エム観光並びに、原告エム・ジー・エムエンターもこれに同意しておりその契約合意を承諾しております」との内容の、原告サン・グリーンの住所、社名、代表取締役名(代表取締役川端安次)の刻印された当時の社判と当時の代表者印による印影が存在する平成六年四月一八日付け念書が存在している。
(三) 本件確認書(乙三)
原告サン・グリーンの被告に対する、「当社は、貴社より本日五億円を借り受けましたが、本件特約の事態が生じた場合、下記の件を確認し一筆差し入れます。1 会員権を発行する権利。2旧会員に対し、保証金を追徴する権利。3 会員に対する年会費徴収の権利。4 会員権名義変更料の徴収の権利。5 名義変更の開始時期及び名義変更料の金額を決定する権利。6 理事等ゴルフ運営に関する委員、役員等の任命権。7 名義変更(ゴルフ場ホテル及び運営に関しての名称変更)の権利。8 その他、ゴルフ場運営に際し当然に発生する権利。以上につき、当社は何等その権利が存しないことを確認いたします。」との内容の、原告サン・グリーンの住所、社名、代表取締役名(代表取締役川端安次)の刻印された当時の社判と当時の代表者印による印影が存在する平成六年四月一八日付け確認書が存在している。
4 リゾップ、フェニックスからの借り受け
原告サン・グリーンは、平成六年四月一五日頃、訴外株式会社フェニックス(以下「フェニックス」という)に三億六〇〇〇万円の借入債務があり、訴外株式会社リゾップ(以下「リゾップ」という)に対して三億二〇〇〇万円の借入債務があった。
原告サン・グリーンは、返済期日の平成六年四月一五日、フェニックスに二億円を支払ったが、一億六〇〇〇万円は弁済できなかった。
二 争点
本件の主たる争点は、本件移転登記及び仮登記についての被告の登記保持権原の有無であるが、具体的には、本件移転登記及び仮登記の原因である売買(被告の主張では代物弁済あるいは譲渡担保)を証する本件契約書(乙一)及び本件念書(乙二)、本件確認書(乙三)が真正に成立したか、真正に成立した場合に本件契約書での合意が本件移転登記及び仮登記の実体上の有効な原因になるかである。
1 原告らの主張
(一) 原告サン・グリーンは、平成六年四月一五日、フェニックスに対する借入金債務三億六〇〇〇万円のうち二億円を弁済したが、その残債務一億六〇〇〇万円については被告の親会社である訴外株式会社ジェイ・トップ(以下「ジェイ・トップ」という)が立替て支払ってくれることになった。
ジェイ・トップは、平成六年四月一八日、右残債務一億六〇〇〇万円を原告サン・グリーンのためにフェニックスに支払い、同日午後六時ころ、その旨後藤から原告らの実質的なオーナーで、原告エム・ジー・エムエンターの代表取締役である早坂太吉(以下「早坂」という)に連絡がなされた(甲一〇の2)。
そこで、早坂は後藤に礼を言うべく、同日午後七時過ぎ帰宅途中に佃の事務所(黒田経済研究所)に立ち寄った(甲一〇の2)。その時、ジェイ・トップのフェニックスに対する代位弁済は既に終了した後で、右事務所にはジェイ・トップの代表取締役である訴外梅園秀文(以下「梅園」という)とリゾップの代理人的立場にあった訴外佃忠行(以下「佃」という)しかいなかった。
早坂は、その場で梅園から、フェニックスがジェイ・トップから一億六〇〇〇万円の代位弁済を受けたことが記載された受領証(甲九)を受け取った。
(二) その後、原告らとジェイ・トップの子会社である被告との間で、原告サン・グリーンのリゾップに対する借入金債務三億二〇〇〇万円とジェイ・トップに対する代位弁済金返還債務一億六〇〇〇万円の返済については、被告と原告サン・グリーンが、本件土地及び借地をゴルフ場敷地とするゴルフ場及び目録二、三のクラブハウスとホテル(以下「本件ゴルフ場及びホテル」という)を共同経営し、その売上金の中からリゾップとジェイ・トップに順次返済して行くことで基本的に合意し、詳細については契約書を作成することになった。
そして、原告らと被告の右共同経営の交渉の過程で、右金額合計に利息を加えた五億円に対し、その利息として毎月一五〇〇万円を右売上金の中から優先してリゾップとジェイ・トップに返済して行くこととされた。
被告の代表取締役である佐川昭一(以下「佐川」という)が、原告エム・ジー・エムエンタープライズの副社長である早坂正吉に対してファックスで報告した、本件ゴルフ場及びのホテルの資金繰予定表の「旧サングリーン」欄には、右利息として毎月一五〇〇万円を営業収益の中から支払った旨記載されている(甲一一)。
(三) 虚偽の移転登記
原告サン・グリーンは、平成六年三月に不渡りを出した。
平成六年五月上旬、梅園から、早坂に対し、債権者特に龍神グループは破産の申立や差押えなど何をするか分からず、若しそうなると本件ゴルフ場及びホテルの経営ができなくなって、原告サン・グリーンのジェイ・トップに対する立替金債務の返済ができなくなるので、お互いの利益のために、本件ゴルフ場及びホテルの土地建物の登記名義をジェイ・トップに変更してはどうかと提案された。そこで、早坂は、真実の取引ではないことを確認する合意書を取り交すことを条件に、虚偽の移転登記をすることを合意した。
その後、梅園から右登記名義をジェイ・トップの子会社の被告にしてほしいとの申し出があり、原告らがこれを了承し、被告名義で本件移転登記及び仮登記がなされた。
右の各所有権移転登記及び仮登記の原因は、いずれも売買であるが、原告らと被告間に目録一ないし三の土地建物について売買契約が成立したことはない。
ところで、本件土地について国土法上の売買の届出をなしたのは(乙一五ないし一七)、国土法違反を問われることを回避するためにすぎず、右届出書の譲渡人欄以外は全て被告が記載している。
(四) その後、右(一)の共同経営に関する交渉は順調に進んだが、平成六年一二月初め、契約書案を作成する段となって、梅園は話し合いを拒み、連絡が取れなくなって、共同経営の契約に至らなかった。
ところが、平成七年二月初めになって、突然、被告は、各新聞に次々とジェイ・セレモカントリークラブと称して補充会員を募集する広告を掲載し始めた。そこで、原告サン・グリーンが抗議したところ、被告は適法に本件ゴルフ場及びホテルを譲り受けたとの主張を始めた。
その後、被告は、原告サン・グリーンの再三の抗議にもかかわらず、補充会員の募集の広告を繰り返し、本件ゴルフ場及びホテルで勤務していた原告サン・グリーンの支配人、経理次長などの幹部社員を被告の役員として入社させ、ゴルフ場の案内板の名称をジェイ・セレモカントーリクブと変更しゴルフ場の借地部分の土地所有者に対し経営会社が交代したと偽り、新たに借地契約を取り交し、原告サン・グリーンの会員に対して年会費を請求し、特別募集と称して新たな会員契約の締結を求めるなど、虚偽の登記を奇貨として、真実ゴルフ場、ホテルを譲り受けたかの如く振る舞ってゴルフ場ホテルを自ら経営するに至った。
(五) 本件契約書(乙一)及び本件念書(乙二)、本件確認書(乙三)は、原告サン・グリーンがリゾップに預けた社判と実印を被告が勝手に用いて作成した偽造文書である。
2 被告の主張
(一) 原告サン・グリーンは、地上げの帝王といわれた早坂が率いる旧最上恒産(現原告エム・ジー・エムエンター)グループの関連会社であり、右グループの業況の悪化により平成四年頃から極度に資金繰りに窮していた。
(二) 原告サン・グリーンは、リゾップから平成五年一月三〇日三億円、及び同年一〇月一二日二〇〇〇万円を借り入れ、同日、リゾップの紹介でフェニックスから三億円を返済期限同年一一月一二日として借り受けた。
しかし、原告サン・グリーンは、右期日にフェニックスに返済できず、一カ月返済期日が延期されたが返済できなかった。
そのため、原告らの実質的オーナーである早坂とその息子の政吉は、平成五年一二月一六日、フェニックスに対し、原告エム・ジー・エムエンターが全発行済株式を有する原告サン・グリーンの株式四万株を平成六年三月一五日限り買戻できる特約付で売却し、これに伴い、ゴルフ場及びホテルの営業をフェニックスに譲渡し、右営業用什器備品及び電話加入を譲渡した。
早坂は、平成六年三月一五日、返済期限を同月三一日限り、返済金額を三億三〇〇〇万円として返済する旨の原告サン・グリーンの確約書を差し入れ本件ゴルフ場からの撤退を求めたため、同月二七日本件ゴルフ場から撤退した。
被告は、佃の働きかけと早坂や原告サン・グリーンの要請を受けて、平成六年三月二七日以降フェニックスの後を受けた形で本件ゴルフ場の委託を受けた。
そうしたなか、原告サン・グリーンは平成六年三月二二日及び同月二四日手形不渡りを出し、事実上倒産した。
フェニックスは早坂及びリゾップ関係者に対し、費用等を含め三億八〇〇〇万円の返還を要求し、返済しないときには刑事告訴すると通知した。
右通知を受けた佃は早坂の減額交渉の依頼をうけてフェニックスと交渉し、平成六年四月一五日限り早坂と原告サン・グリーンが三億六〇〇〇万円をフェニックスに返済することで刑事告訴を回避する旨の約束を得たが、早坂は同日二億円しか用意できず、フェニックスに返済されなかった。
(三) かような状況に至る経過において、佃からジェイ・トップの代表取締役である梅園に対し、早坂が平成六年四月一五日に返済できないときには、その返済資金を用立ててくれないかとの打診がなされた。
梅園は、一時は躊躇したが、用立てた金員の返済を怠ったときには、ホテルを含めた本件ゴルフ場用地等の不動産はもとより、営業に必要な什器備品を被告に渡して本件ゴルフ場経営から手を引くことに同意するなら、被告が早坂側に貸し付けてもよい、と佃に返答した。
すると、佃から梅園に対し、早坂側は了解したと連絡してきた。
平成六年四月一五日の夕方、佃から梅園に対し、「早坂側は二億円しか用意できない。フェニックス宛に四月一八日に現金一億六〇〇〇万円を支払うとの念書を入れてくれないか。また、リゾップへの返済金も用意してくれ」との連絡を受けた。
そこで、被告は、フェニックスに対する代位弁済金一億六〇〇〇万円とリゾップに対する代位弁済金三億二〇〇〇万円の合計四億八〇〇〇万円を、梅園の紹介で訴外株式会社札幌企画から一億六〇〇〇万円、訴外株式会社インヴィから三億二〇〇〇万円を借受け準備をした。
(四) 被告の代表取締役である佐川は、平成六年四月一八日午後四時三〇分ころ梅園を同行し、リゾップの事務所を訪れリゾップに対する原告エム・ジー・エム観光の貸金債務三億二〇〇〇万円を代位弁済した。
その後、佐川と梅園は、リゾップの代表取締役である訴外奥山英巳(以下「奥山」という)とともに、同日午後六時ころ、佃の主宰する黒田経済研究所の事務所に赴き、梅園が被告の代理人として、原告エム・ジー・エム観光のフェニックスに対する資金債務一億六〇〇〇万円を代位弁済した。
この場には、佃、奥山始めフェニックス及びリゾップの関係者と早坂と訴外藤田悟己が同席している。
その際、フェニックスの関係者から早坂に対し、フェニックスが保管していた原告サン・グリーンの社判及び印鑑等が返還された。
(五) その後、フェニックスの関係者が退席した後、奥山から早坂に対し、被告から三億二〇〇〇万円の代位弁済を受け清算が終了したことが報告され、原告サン・グリーンがリゾップに差し入れていた金銭消費貸借証書を早坂の前で破棄し、原告サン・グリーンが右金銭消費貸借の際にリゾップに担保として差し入れていた約束手形二通合計額面金額三億二〇〇〇万円(乙一二の12、一三の1、2)を被告と原告サン・グリーンとの金銭消費貸借の担保として、早坂の承諾のうえ奥山から梅園に渡された。
その後、佃から早坂に対し、本件契約書(乙一)、本件念書(乙二)及び本件確認書(乙三)が示され、原告らの実質的オーナーである早坂が原告らを代理(代表)してフェニックスの関係者から返還された社判と印鑑を用いて右各書類に記名押印した。
3 本件契約書及び本件念書、本件確認書の原告サン・グリーンの記名押印は、原告らの実質的なオーナーというべき早坂が行なった。
4 本件準消費貸借契約の締結直後、早坂から、梅園に対し、訴外龍神興業(以下「龍神」という)など原告らの債権者から本件ゴルフ場施設等に対して仮差押えや原告らに対しての破産申立ての懸念が表明された。
そこで、本件準消費貸借金の返済を危ぶんだ梅園は、本件土地建物につき被告へ所有権移転登記しておくことで早坂と利害が一致したので、「原告サン・グリーンが平成六年七月一七日までに五億円を被告に返済しない場合は、本件特約に基づく手続とし、返済した場合には、以降、原告らの債権者から差押えや破産申立を受けることを回避する」との合意をした。
そして、原告らと被告は、平成六年四月二八日付けで国土法に基づく売買の届出をし、同年五月二〇日付けで不勧告通知を受け、同月二七日受付をもって同月二四日売買を原因とする本件土地建物に係る仮登記が、同年六月三日受付をもって本件土地に係る登記が経由された。
5 以上の経過を踏まえると、本件土地建物について経由された本件移転登記及び仮登記は、一種の代物弁済の予約であり、あるいは譲渡担保というべきである。
6 平成七年七月一七日まで、被告に対し、本件準消費貸借契約に基づく金五億円の返済を怠った。
よって、本件特約により、被告は、代物弁済として原告らが所有する本件土地建物の所有権を取得し、本件移転登記及び仮登記は、実体と一致することになった。
代物弁済ではなく譲渡担保としても、本件土地建物に対しては総額二〇〇億円以上の被担保債権額をもって各種担保権が設定されており(甲一ないし三)債権額よりも目的額が下回り、清算義務が発生しない場合であるから、右債務不履行と同時に本件土地建物の所有権が譲渡担保権者である被告に移転した(最判三小昭和五一年九月二一日判例時報八三二号四七頁)。
7 以上のとおりであるから、本件土地建物は代物弁済もしくは譲渡担保の実行により、被告に所有権が移転したから、本件移転登記及び仮登記は有効であり本件建物の占有も所有権に基づく(原告らの所有権の喪失)ものである。
第三 判断
一 本件全証拠によっても、本件契約書及び本件念書、本件確認書が真正に成立したことを認めるに足りず、したがって、本件移転登記及び仮登記の原因とされる本件契約書における代物弁済契約もしくは譲渡担保契約を締結した(抗弁)と認めるに足りない。
理由は以下のとおりである。
二 本件移転登記及び仮登記の実質的な原因証書である本件契約書自体の不自然
1 争いのない事実のとおり、本件契約書(乙一)及び本件念書(乙二)、本件確認書(乙三)が存在し、これらの書面には、被告の記名押印と原告サン・グリーンの住所、社名、代表取締役名の刻印された社判と当時の代表者印による印影が存在する。
2 ところで、本件特約の「ゴルフ場敷地内に存する…不動産」は本件土地建物であり、同特約の「売買(ただし借入債務の清算として)」の当事者は原告サン・グリーンのほか、原告エム・ジー・エムエンター、原告エム・ジー・エム観光も含まれるから、通常、同原告らの担保提供者として記名押印が存在するのに本件契約書には存在せず、原告サン・グリーンが原告エム・ジー・エムエンター及び原告エム・ジー・エム観光の右担保の提供を承諾しているという本件念書を提出することで、通常、本件契約書になされるべき右の同原告らの担保提供者としての記名押印に代替している。
そして、被告提出の佃の報告書(乙七)には、「本件契約書は、平成六年四月一五日、原告サン・グリーンがフェニックスからの三億六〇〇〇万円の借受債務のうち二億円しか返済できないことが判明した際、以前から佃が早坂から了解を得ていたとおり、梅園に頼んで被告からフェニックスに対して一億六〇〇〇万円を代位弁済してもらい、また原告サン・グリーンのリゾップに対する三億二〇〇〇万円の借受債務についても被告に代位弁済してもらい、原告サン・グリーンが被告に対し、右代位弁済金(利息を合せて五億円)を返済期限に支払えないときには、本件ゴルフ場敷地内不動産を始め経営権を被告に譲ることにしてよいか伝えて早坂の了解を取り、同月一八日に、本件契約書、本件念書、本件確認書の案文を作成して準備しておいた」旨記載されているが、事前に本件契約書の内容で早坂が了解していて、本件契約書の調印となったのであれば、本件特約を含む以上、原告ら全員が担保物件提供者として予め予定された案文が作成されていて然るべきであり、本件契約書が、本件特約の重要性からしても、原告サン・グリーンと被告だけが当事者となっていることは不自然である。
3 しかも、本件特約によれば、被告と原告サン・グリーンとの間で、原告エム・ジー・エム観光の目録二の土地建物及び原告エム・ジー・エムエンターの目録三の土地建物を売買するとされ、原告サン・グリーンの所有しない右土地建物を、被告と原告サン・グリーンとの間のみで、原告サン・グリーンの借入債務の清算のために処分する内容となっていて、後述のとおり、原告エム・ジー・エムエンターと他の原告らとの関係を考慮しても、通常の契約書の担保内容として不自然である。
4 証拠(乙四三、四五の1ないし21、証人梅園秀文、原告代表者早坂太吉)によれば、本件ゴルフ場の敷地の借地部分は全体の四割にも及び本件ゴルフ場の維持には右借地権の存続が不可欠であり、平成六年四月当時の右借地権者は原告サン・グリーンであったことが認められる。
しかるに、本件確認書ではゴルフ場運営に関する基本的事項が詳細に記載されているのに、本件契約書、本件念書、本件確認書、そして右各書面と同様の記名押印の存在する動産売買契約書(乙六)のいずれにも、右借地権の譲渡等については記載されていない。
これは、真実、本件契約書や本件確認書に記載のとおり、借受金五億円を原告サン・グリーンが返済期日に返済できない場合には、本件ゴルフ場敷地内の土地建物(本件土地建物、すなわち原告ら所有のゴルフ場敷地、クラブハウス及びホテル)と什器備品、会員権や会費等及びゴルフ場運営に係る諸権利を、そして、証人梅園秀文の証言するように本件ゴルフ場の営業権も右貸金債務の清算のため譲渡するというのであれば、当然に右借地権が問題となり本件契約書なりに記載されて然るべきである(被告は、本件土地建物には二〇〇億円以上の被担保債権で担保権が設定してあり、ゴルフ場一切を売却しても通常二〇〇億円を上回ることはないから、五億円で代物弁済とするのは不合理ではないと主張しているが、そうであれば本件ゴルフ場の場合、右借地権の取得はゴルフ場を経営する場合は勿論、処分する場合にも不可欠と考えられる)から、この点でも不自然である。
5 被告は、早坂が、原告エム・ジー・エムエンターの代表取締役であると同時に、原告サン・グリーン及び原告エム・ジー・エム観光の実質的オーナーとして、本件契約書及び本件念書、本件確認書に原告サン・グリーンの記名押印をしたと主張し、証人梅園秀文も同旨の証言をするが、仮に、早坂が右の記名押印をしたとするならば、後述のとおり、原告エム・ジー・エムエンターと他の原告らとの関係や早坂の立場からすると、本件契約書や本件念書にも、早坂が原告エム・ジー・エムエンターの代表取締役として、また、原告らの実質的なオーナーとして署名するのが通常であろう。そして、その場で社判と代表者印がなければ、早坂が署名し、後日、社判と代表者印で補充してもらえれば良いのであるから、いずれにしても、早坂が本件契約書等に原告サン・グリーンの記名押印をしたとすると、ことの重大性からして、早坂が本件契約書、本件念書に署名していないのは不自然である(証人梅園秀文は、それまで早坂に苦い思いをさせられたと証言しているのであるから尚更である)。
三 本件契約書及び本件特約の不合理性
1 本件契約書では、被告が貸主、原告サン・グリーンが借主として、五億円の消費貸借契約が成立したと記載され、被告は、原告サン・グリーンのフェニックスに対する借受残債務一億六〇〇〇万円及びリゾップに対する借受債務三億二〇〇〇万円を被告が代位弁済したと主張するが、フェニックス作成の受領書(甲七、九)及びジェイ・トップ代表取締役としての梅園作成の確約書(甲七、九)には、ジェイ・トップが代位弁済者とされており、不可解である。この点、証人梅園秀文の証言によっても、被告提出の訴外森田憲儀の陳述書(乙一八)によっても納得の行く説明がなされていない。
2 本件契約書では、貸付金額が五億円とされ、被告の主張では、フェニックスに対する一億六〇〇〇万円及びリゾップに対する三億二〇〇〇万円の代位弁済金額と利息であると主張し、証人梅園秀文も同様の証言をし、リゾップは調査嘱託に対し、「平成六年四月一八日、現金で元金三億二〇〇〇万円を梅園から受領した。利息は受領せず、これで完済とした。黒田(佃)が仲介した際の約束だったからである。領収書は発行していない。完済の証として、リゾップに差し入れていた約束手形二通(額面合計三億二〇〇〇万円)と担保権の抹消書類一式を梅園に渡している」と回答し、証拠(甲三三、三四、三五の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、リゾップを登記権利者、原告エム・ジー・エム観光を義務者とする目録二の建物の登記済権利証書、リゾップを登記権利者、原告エム・ジー・エムエンターを義務者とする目録三の建物の登記済権利証書及びリゾップの登記申請委任状を所持していることが認められる。
しかしながら、リゾップからの借受金三億二〇〇〇万円が無利息であったなら、早坂は本件特約を承諾してまでして、三か月という短期間の返済期限で梅園に対し、リゾップに対する代位弁済を依頼するであろうか。
また、リゾップが三億二〇〇〇万円の弁済を受けて、弁済日を記載した領収書を発行しないのも不可解である。リゾップが完済の証として梅園に渡した約束手形(乙一二の1、2、一三の1、2)は受取人が訴外羽黒産業株式会社であり、リゾップからの借受金の返済の証となるか疑問であるし、証拠(甲五、証人梅園秀文)によれば、原告サン・グリーンは、当時、二度の不渡りを出していたと認められるから、右手形のリゾップへの交付が領収書以上の意味があるとは考えられない。
また、右のとおり、リゾップが担保権の抹消書類一式を梅園を経由して被告に渡していることは認められるが、未だ抹消されていないのは、「被告が当分抹消しない予定である」(右回答書)からというのであり、それは、目録二及び三の建物に対するリゾップの抵当権(甲二九、三三、三四)を代位弁済による求償債権の担保として利用する趣旨と考えられるが、それには代位弁済を証する領収書や金銭消費貸借契約書の所持が重要であるのに、領収書は発行せず金銭消費貸借契約書は代位弁済を受けたときに破棄したというのである(右回答書)が、不可解である。
また、被告は、一億六〇〇〇万円については、平成六年四月一八日に訴外株式会社丸中札幌企画から借り受け、これを同八年三月二五日に返済したとの受領書(乙三一)を提出しているが、三億二〇〇〇万円については、訴外株式会社インヴィ(以下「インヴィ」という)から借り受けたと主張しているものの訴外株式会社ジーベックから、平成七年六月三〇日、三億二〇〇〇万円借り受けたとの金銭消費貸借契約書を提出し、インヴィからの金銭消費貸借契約書は提出していない。
証拠(甲一一の1ないし13、一二、一三の1ないし12、二九の乙区一五番、原告代表者早坂太吉)及び弁論の全趣旨によれば、原告サン・グリーンは、リゾップから、平成五年一月三〇日、三億円を借り受け、利息を支払っていたが、同六年三月二九日頃、同原告が、被告に本件ゴルフ場とホテルの経営を委任する際に、その売上金からリゾップに対し、毎月一五〇〇万円を支払うことを合意し、被告は、同年四月分から同年一〇月分まで、不定期ながら支払っていたことが推認される。
以上によれば、被告が、真実、平成六年四月一八日、リゾップに対し三億二〇〇〇万円を代位弁済したかは疑問が残る。
四 平成六年四月一八日当時の原告サン・グリーンの社判及び代表者印の所在等
1 証拠(甲七ないし九、一七、三〇、乙一八、三八ないし四二、原告代表者早坂太吉)及び弁論の全趣旨によれば、早坂は、エム・ジー・エムグループの資金繰りのために、平成五年一〇月一二日、原告サン・グリーンを借主とし、フェニックスから三億円を借り受け、返済期日を繰り延べた後、謝礼金六〇〇〇万円と合せて同六年四月一五日に返済することになったが、その過程で、同五年一二月二二日、早坂は、フェニックスに対し、同原告の当座小切手帳、約束手形帳、実印(代表者印)、銀行印、ゴム印(住所、社名、代表者名)、角印、割印を各一個(銀行印は二個)を預け、本件ゴルフ場の経営を委ね、フェニックスは同六年三月二七日まで本件ゴルフ場を経営し、収益を約一億二〇〇〇万円上げて、同月末、本件ゴルフ場の経営から撤退し、同六年三月末以降、被告が本件ゴルフ場及びホテルの経営を委任されて、経営していること、フェニックスからの借受債務については、同年四月一五日、同原告が二億円弁済し、同月一八日、ジェイ・トップが一億六〇〇〇万円弁済したことにより、同原告のフェニックスへの賃金債務が消滅したことが認められる。
2 また、証拠(乙一八)によれば、フェニックスの事実上の経営者である訴外森田憲儀は、陳述書において、平成六年三月二九日、フェニックスからリゾップの奥山に対し、営業譲渡(実質は営業の委託)に関わる書類一式及び営業上必要な書類一式(実印、社判を含む)を渡したと陳述している。
3 証拠(甲一七、乙一五、四五の1ないし21、原告代表者早坂太吉)及び弁論の全趣旨によれば、本件契約書、本件念書、本件確認書に押捺された原告サン・グリーンの社判及び代表者印の印影は、被告が本件ゴルフ場でのゴルフ会員を補充募集するために、関東通商産業局商工部消費経済課に提出した、平成七年二月一四日付けの「合意書」の、同原告の社判及び代表者印の印影と同一であるが、同原告は、右代表者印を平成六年四月末頃に改印し、以後、新しい代表者印を使用していること(社判も乙一と乙一五とを比べると明らかに異なる)から「合意書」が偽造されたものであるとして、同年三月一六日、渋谷警察署長に対し告訴したことが認められる。
4 以上の事実及び被告のリゾップに対する利息の支払いの事実等を総合すれば本件契約書、本件念書、本件確認書の原告サン・グリーンの社判及び代表者印は、平成六年三月末以降、梅園あるいは被告が保管していたと推認される。
五 その他の事情
1 梅園の報告書(乙一〇)には、「平成六年六月下旬頃から七月初め頃に早坂から営業委託の契約書を作りたいとの協議を求める申し出があったが、七月一七日までに五億円を返済すれば何時でも登記を抹消するし、ゴルフ場の営業をおりてもいい」と返答した旨の記載があり、同年七月一七日までは、本件特約が実現されていないことを認め、本件移転登記及び仮登記についても、当初は龍神からの差押えや破産申立を回避する目的であったと証言し、同日まで本件特約に基づく本件土地建物の所有権移転はなかったと認めているが、本件契約書では、原告サン・グリーンが不渡りを出したときには、本件特約が適用されることになっていて、本件移転登記及び仮登記の時点で、実際に同原告が二度の不渡りを出していたのに、本件特約による所有権移転の話が出た形跡が証拠上認められないのは不可解である。
2 被告は、本件特約(なお、本件確認書)により、本件土地建物のみならず、営業権及び借地権を取得して営業していると主張し、しかも証人梅園秀文は、ゴルフ会員権者に対する預託金返還債務を原告サン・グリーンから引き継がない約定であったと証言するが、前述のとおり、被告は、平成六年三月二九日頃本件ゴルフ場の経営をフェニックスに代わり委託された際に、フェニックスから約一億四〇〇〇万円を引き継いでいること(甲一一の一の左上部角の「繰越高欄」左余白に「三月末残一三五、〇七九、〇一六」とある。甲三一、原告代表者早坂太吉)や、リゾップへの代位弁済による求償債権には目録二、三の建物について三億円の抵当権設定仮登記が存在していること、新規の会員募集ができることからすると、本件特約は、余りにも被告に有利ではないかと考えざるを得ない。
そして、営業権の譲渡、それもゴルフ会員権者に対する預託金返還債務を引き継がないのであれば、原告サン・グリーンにとって極めて重要であるから、本件契約書に記載があって然るべきであるし、本件確認書のような形でも存在しないのは不可解である。
3 証拠(甲一七、乙四五の1ないし21)によれば、原告サン・グリーンと本件ゴルフ場の原告ら以外の土地所有者との間の賃貸借契約の合意解約書が存在し、右合意解約書に押捺された同原告の社判及び代表者印と本件土地の国土法による届出の同原告の社判及び代表者印は、印影の対照によれば同一ではないかと考えられ、前記のとおり、当時、被告が本件契約書に押捺された同原告の社判及び代表者印を所持し、前記四、3の合意書にも本件契約書のそれが使用されていると考えられることを考慮すると、右合意解約書は同原告(早坂)の了解のもとで作成されたものと推認される。
そして、その事情は、前記のとおり、本件移転登記及び仮登記と同様、龍神の借地権の差押えや破産申立てに対処する手段の一つとして作成されたと考えることもできる。
六 本件移転登記及び仮登記の経由の経緯等
1 証拠(甲五、一一の1ないし14、一二、一八中の横尾継彦の上申書、乙七、一〇、一四、二六、証人梅園秀文、原告代表者早坂太吉)によれば、平成六年三月末、原告サン・グリーンは、龍神からの同原告振出の約束手形を、事前の予告なく交換に回されて二回不渡りを出し(銀行取引停止)、同年四月八日、同原告の株式を取得した龍神によって同原告の取締役及び監査役が就任し、同原告が龍神に支配される危険が迫り、龍神から、本件ゴルフ場敷地内の土地やクラブハウス、ホテルである本件土地建物について差押えをされたり、同原告が破産申立を受ける危険が迫ったこと、そうなると、被告が同原告から委託を受けて行なっている本件ゴルフ場及びホテルの経営を続けられなくなることから梅園から早坂に対し、「本件土地建物の登記名義をジェイ・トップ(後に、被告)に変更したほうがいい」との提案がなされたこと、そして、早坂がこれに同意し、原告らの監査役であり司法書士である訴外横尾継彦が保証書による方法で本件移転登記及び仮登記の手続をしたことが認められる。
2 そして、証拠(甲一七、乙一五ないし一七の原告サン・グリーンの各代表者印)及び弁論の全趣旨によれば、本件土地について国土法の届出をして、本件移転登記が真実売買を原因としているような体裁を整えたことが認められる。
3 証拠(甲一八、乙六)によれば、原告サン・グリーンの社判と代表者印のある同原告と被告間の動産売買契約書と同原告の売買代金二〇〇万円の領収書(いずれも平成六年四月一八日付け)が存在することが認められるが、本件契約書の貸金債権(求償債権をもとに準消費貸借契約)があるのに、右領収書が存在することからすると、本件土地建物とは別に龍神ら同原告の債権者からの動産執行を免れるためであったろうと推認される。
七 早坂の原告らにおける地位
証拠(甲一七、一九、乙一四、三四、原告代表者早坂太吉)及び弁論の全趣旨によれば、早坂は、原告エム・ジー・エムエンターの代表取締役であり、原告サン・グリーンと原告エム・ジー・エム観光は原告エム・ジー・エムエンターの一〇〇パーセント子会社であること、訴外川端安次は、エム・ジー・エムグループの訴外ダイヤ食品株式会社を経営し、平成五年六月二八日、原告サン・グリーンの取締役及び代表取締役に重任され、同六年四月八日解任され、同月二五日に取締役及び代表取締役に就任しているが、同原告の代表者は名目上であり、早坂が原告サン・グリーンの社判や代表者印を管理、使用して実質上の代表者として振る舞っていたことが認められる。
八 以上を総合すると、被告から主張の事実関係に沿う証人梅園秀文の証言を始めとする証拠が提出されているけれども、前述のとおり幾多の疑問が残り、本件契約書、本件念書、本件確認書が真正に成立したとまでは認め難く、本件契約書が本件移転登記及び仮登記に合せて作成されたとの疑いを払拭できない。
また、前述のとおり、被告の原告サン・グリーンに対する求償債権について本件移転登記及び仮登記がその担保とされているとまで認めることもできない。
そうすると、原告代表者早坂太吉の供述には必ずしも信用できない面があるものの、結局、被告の抗弁事実を認めるに足りないと考える。
九 以上によれば、原告らの本訴請求は理由があることになるから認容し、訴訟費用の負担については、民事訴訟法八九条を、仮執行宣言については同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官髙橋光雄)
別紙<省略>